福祉体感ツアーで本気のプロに、出会おう
ゲンバで働く先輩たちは、どんな想いで障がいのある方に接しているんだろう?そんなクエスチョンの答えを直接聞ける、プロに出会える、8回限定のゲンバ見学ツアーが開催されます!今年4回目の訪問先は、堺市にある『社会福祉法人朋志美会 しののめハウス』さんです。
就労支援B型、地域活動支援センター、共同生活援助などの各事業をされています。
・「誰でも自分らしく生きていく権利がある」をモットーに平成10年に開設。
・症状や障害の程度が重くても地域で自分らしく生きていくことができる支援とは何か。
当日は、私たち支援を行う者の基本的は心構えを解説いただくと同時に、高齢化が進む利用者さんに対する取り組みを一緒に考える機会といたします。下記は、当日のおおまかなスケジュール(予定)です。
- 19:00
- 集合(ハウス正面玄関中)・事業所のご説明・見学など<その後、移動・休憩>
- 19:30
- 【講義】しののめハウス 菅野治子氏(施設長:精神保健福祉士)
- 20:30メド
- 意見交換(基調講義を基に話し合いを行います)
- 21:00
- 終了メド
ツアーレポート
開催風景
第4回学生向け福祉体感ツアー(in しののめハウス)開催シーン まとめ日 時:平成30年8月31日(金) 午後7時~9時
場 所:しののめハウス(地域活動支援センター、相談支援事業、就労継続支援B型)
参加者:大阪医療技術学園専、大阪保健福祉専、大阪バイオメディカル専、関西大学
(合わせて37名の参加)
〇イントロダクション・昨年末にこれまで活動参加いただいた各学校のご担当者から、ツアー先のご推薦などをご紹介いただきました。その結果、圧倒的に「キャリアセンターご担当者が一度行ってみたいところ」の希望多数(1位)に挙がったのが、今回の「しののめハウス」です。
・しののめハウスの活動は「多彩」です。地域における”ホームグラウンド”とはかくあるべし、といわんばかりのその活動に「単なる制度上の類型」を求めるだけの視点だけでは到底理解しえない「何か」を、今回、図らずも体感することとなりました。
〇基本講演(”2時間きっかり”、菅野施設長による「基本講義」を拝聴しました)

堺市から徒歩10分もかからないところに、「しののめハウス本館」があります。
ここには、食事をしたり、憩ったり。生活に関するもの(機材)が一通り揃っています。
ここは、なんと驚くべきことに、利用契約者以外の施設利用も可能だそうです。
(当日シーン)ツアーでも過去最多僅差の参集者35名の方が集まりました。なので、利用者の生活があるピンク色の本館は、個別に別日で見学等をしていただくことになりました(個別連絡、または私まで連絡の上、取次)。この日は、相談支援事業の相談室などがある別館(ちょうど本館の背中合わせの別の建物)の1階で貴重なお話をお聞きしました。
〇2002年の「月刊ノーマライゼーション」8月号に「こころのふるさと/しののめハウス」という現在も関わりがあるという一利用者(山田礼子さん)の記事を見つけたので、当日の資料として配布しました。以下はそこから抽出した要点(概略)です。
・友人が「利用」していると知り、自分も行ってみた。その頃の自分は「障がいを職場に告げずに」働いていた(心の病がある)。
・通い始めて、自分にとっての24時間のうち、そこから得られる生活支援はとても大きい。安価で美味しい食事、洗濯、入浴。カラオケ(1曲30円)、麻雀(本当に金銭を掛けられる)。
・地域に普通にあって、かつ公的でもあり、最初の1歩を踏み出しやすいオープンな場であってほしい。家族よりも本当に気遣いなく会えたりできる何気ない共に時間を過ごせる場であってほしい(たまにケンカも)。
・そういった場所は、故郷の様でもあり、転ばぬ先の杖の役割なのかもしれない。
・昔話に出てくる「駆け込み寺」とは、こういった場所であったのかもしれない。
・食事が必要なら、そこにある。ただし、1人ではできないことでもみんなで用意し、みんなで後片付けをする。洗濯機を回したければ、そこにある。ただし、1回につき、30円が必要。順番さえしっかり守れば、いつも清潔な服を着るために、洗濯をすることができる。洗濯機を回す間は、自分の心の洗濯までできるかもしれない。
(当日配布した資料の一部を、要約と若者向け翻訳等をさせていただきました)<当日アンケートのまとめ>
〇参加者から、①菅野さんのお話を聞いて(感想・意見)、②講義をお聞きする前と後では、来る前にしていたイメージに変化などはありましたか、の2点についてご提出をいただきました(以下)。1 「菅野さんのお話を聞いて(感想・意見)」
・一人一人のことを大切にすることや、どなたでも受け入れていることは「すごい」。
・「君たちはゆくゆくは”サービスを提供する側になる”」という言葉が印象に残った。
・ミーティングを職員だけでなく、全員で行うということがすごいと感じました。
・現役のワーカーのお話は大変貴重であり、お聞きできて良い経験となりました。非常に楽しかったです。菅野さんのお考えなどをこの先もずっとお手本にしたいと思いました。
・感想を素直に言えば「衝撃的」でした。特に利用に「金銭が絡む」箇所は、人間生活上でも特にシビアなところだったので、利用者などでうまく協力して行っていることを聞いて、単純にすごいと思いました。
・この話は究極の「メンバー主体」のお話であると、全体から感じました。何をするのにも「メンバーと話し合って決めていく」、そこが今日の一番の良き部分でした。
・何事にも挑戦し続ける菅野施設長の姿勢に凄みを感じた。その人らしい生活を送ることができるような支援、を考えるのであれば、一人一人の支援は全て違ってくる、との言葉が印象的でした。まさに誰に為に支援をするのか、ということですね。誰でもできるだけ受け入れるということもすごいの一言です。
・他ではやらないことを、当たり前だと思って、かつ実行されているのには、本当に驚きました。為になりました(感謝)。
・ハウスを立ち上げるまでの「道のり」のお話も大変貴重でした。菅野施設長は大変素敵な方だと思いました。
・メンバー主体を標榜し、それを実行している作業所は他にもたくさんあると思いますが、「しののめハウス」ほど、徹底した「メンバー主体」を通しているところは他にはないと思いました。とても感動しました。
・ここに来ないと聞けない話をお聞きできました。ありがとうございました。
・分かりやすいお話も多かったが、理解が追い付かないお話もあり、またご訪問させてください。
・利用者の立場になって考えるという基本的なことについて、多くを学べた。
・予想以上の現場のお話を聞くことができて、授業を休んできた甲斐がありました。伝説の菅野さんの生話が聞けて、「菅野さんが本当に人間が好きなんだ」ということがよくわかった。出来ることをまず信じようとする姿勢に感動した。
・社会から排除されがちの方々を拒まず受け入れ、管理をできるだけしない姿勢が、結果メンバーによる自治になっていることについては、驚きを通り越してしまいました。
・誰でも自分らしく生きていく権利を利用者が達成する時の喜びまでお聞きできて、自分の今後の活動にぜひ活かせたらと思いました。
・このような考え方があるのか、このように考えれば良いのか、等々、学校の授業では知ることができないお話をお聞きできてとても勉強になりました。
・今の日本にある、法律や制度に対して、簡単にそれが当たり前だと思ってしまうことの怖さを学びました。
・当たり前に行っていることがすべてではない事例をたくさんお聞きできた。先入観を崩すということが割に難しいのだと実感した。
・誰でもできるようなお話では決してなかったと思います。決まりごとがうまく運用されるためにあることを忘れてしまっている自分に気が付いた。
・今日の講師は特に素敵でした。尊敬します。
・菅野さんが様々なエピソードを話された後に、「それでも生きてはるんやね」とおっしゃられたことがずいぶんと印象に残りました。人は様々な生きざまと背景、個性があるものだという基本的なことに改めて気づくことができました。
・今まで、自分が関わってきた方は「不自由さ」「不便」を感じていなかったのかなと思い、支援者である私が当たり前にしていること・・・「娯楽」「おしゃれ」「サボり」なども同じように享受できていたかなと心配になってしまいました。
・とてもわかりやすいお話だったが、実はレベルの相当高いお話だったことも感じられて、こういったお話を今晩聞くことができたのはラッキーだったと思いました。
2 講義をお聞きする前と後では、そのイメージに変化はありましたか?
・(訪問前)地域の一資源に行くというぐらいのイメージ
⇒(訪問後)地域にこのような施設が増えればいいな、自分も参加してみたい。
・(訪問前)しののめハウス=制度・サービス色の強い事業所
⇒(訪問後)居場所・駆け込むことのできる場、自分のことは自分で決める場
・(訪問前)一緒にはたらく場所
⇒(訪問後)当たり前の人間関係を営む場所
・(訪問前)職員や市町村/都道府県が関与する施設
⇒(訪問後)メンバーが作り上げる施設
・(訪問前)受注した仕事をみんなで行っているイメージ
⇒(訪問後)施設で生活を集団で行うために必要な相互のお手伝いそのものが仕事になる(なっている)というイメージ
・(訪問前)どのような制度・事業を行っている場(なのかな)
⇒(訪問後)何でもとにかくやってみる、どのような方でも基本受け入れる場
・(訪問前)どれだけ厳しいルールがあるのかな
⇒(訪問後)相互に人として自然な感覚で話すことから、自然に創り上げられるルールがある。良い意味で非常に緩いことがその可能性を高める
・(訪問前)その人らしさを考えるためにルールを作る
⇒(訪問後)その人らしさを奪わないということから、ルールが創生される
・(訪問前)メンバーをどう管理するか
⇒(訪問後)メンバー同士の対話を誘発する(為の仕掛け)
・(訪問前)サービスを活用する側からサービスを提供する側になるというお話はかなりスケールが大きすぎるのでは?
⇒(訪問後)支援側が根気と計画力も強く持てば、実現可能である。
・(訪問前)特に何も思っていなかった。
⇒(訪問後)特に変化はない。とても自由でのびのびしているなと感じた。
・(訪問前)施設の概要やオーナーからの実施状況の説明があるというイメージ
⇒(訪問後)全く予期できなかったほどの「実例」「実際会った方々の背景」「価値観」などをシャワーのように浴びられた。予想外のこの衝撃感。
注:イメージの変化について
⇒訪問前はいわゆる一般的な「訪問前価値観」だったのが、訪問後に「大きく奥深く変化している」ことが印象的。たまに「変化なし」とのお答えもあったりし、こういったことが「具体的なアンケート」として入手できたこともこれが「これからの方=ツアー参加者」企画であったのだと改めて感じられたりして、私自身、ちょっと安心しました(前野)。
(編集後記)
病院でケースワーカーを永きにわたって定年まで勤められ、そのご勤務の早い段階で、「個人の事由(本当の自由)」が額面上の支援の限界を拡げることに気づき、院内にサロンを運営し、その時に培ったアイデアを基に、現在の「しののめハウス」を創設された「菅野治子」施設長のお話は、その語り口同様、たいへん分かりやすく、得難い時間をいただけたと感謝です。
ただ、これが他の人にも「たやすくできることか?」と言われれば、かなり難しいことなどだとも、同時に感じさせられる時間にもなったようです。
帰りがけのご挨拶をしている中で、「真似のできないことだらけでした」と感想を申し上げると「真似なんかはしなくていいのでは?」と切れ味するどいお返事があったのが大変印象的でした。
諸事がもやもやと閉塞感に陥った時、支援があれば「何とか自分でできそうだ」と感じるとき、独りでは寂しすぎるとき、地域で必要な場所とは何か、それを考えるのは、人の真似だけでは到底できないよ、と、菅野さんの眼がそうおっしゃっておられました。菅野さんに言わせれば、しののめハウスの方々は「自分を自分らしく表現しているだけ」なのだそうです。
「自分らしさ」・・・ この日は、特に支援をする者の基本的な心構えの奥深さを特にいろいろ考える日になりました。半年に1回は今日のような日も必要ではないかと改めて感じた次第です。
大阪市就ポツ 前野
<第4回ツアー回帰>しののめハウス施設長菅野さんへのご質問
――― お答えのヒアリングまとめ ―――
Q1:菅野さんは、支援者として「一番のやりがい」をどこに感じておられますか? 同時にPSWとして一番大切にされていることがあれば教えて下さい。
対象者が生きやすくなったと感じたときだと思います。周りに迷惑を掛けなければ、何をしても構わないと言うことをモットーにして関わっています。 SWは、生活問題に関わるため、いつの間にかオールマイティーだと勘違いしていないか、あるときは自分の考えを押しつけていないか、また何でもしてあげることでその人が本来出来ることまで奪っていないか、等を常に考えています。 学生時代に岡村先生から直接教わったSWの立場「社会関係の障害の主体的側面からの支援」に立ち戻って考えるようにしています。何故この状態になったのかを問題にするのではなく、今の状況でどんな支援が必要かを考えたいと思っています。Q2:募金や寄付などは何故多く集まったのでしょうか。何かコツなどがあるのでしょうか。
今まで多くの対価を求めず出来る範囲で本の販売や寄付をしてきました。またメンバーさんの生活圏で、買い物をしたり、美容院を利用したり、その中に融け込むよう努力してきた結果ではないでしょうか。引っ越しの際の不要品の処分の依頼があれば、こちらには不要なものでも引き取ってきたと言うことも遠因でしょうか。Q3:他地域の方が支援を求めて沢山来るようになったのはどのような理由からだと思っていらっしゃいますか。出来れば「きっかけ」となった出来事など。
シノノメハウスの立ち上げは、私が勤めていた病院のサロンのメンバー(患者)さん達の要請に基づくものでした。その人達の中には、大阪市や松原市在住の方もいました。補助金は堺市から出ていましたが、この人達を排除することなく、経済的に困らなければ誰でも引き受けてきました。地域の壁と言ったものは考えていません。Q4:講話中に「当直2名が実現すれば、事業的にもっと面白いことが出来る」とおっしゃっていたのですが、もっと詳しく伺えますか。
生活支援は、「火災警報器が鳴り出してとまらない」「水漏れがしている」など、真夜中でも起きます。それ以外に精神的な問題で「不安で眠れない」等のアピールに対して、電話相談などをしてくれる人があれば、かなりの人が地域で生活していくことが出来ると考えます。高額な補助金や大きな施設が必要ではなく、小さな施設に当直者が2名常駐するという体制なら、実務的にも補助金的にも効率が良いのではないかと考えています。私は今施設の3階に住み、夜間対応をしていますので、この様な必要性を感じています。Q5:かつて病院でケースワークされていたときなどに、結局「どうすればいいか分からなかった」患者さんの例などがあれば教えて下さい。
①退院可能だと思える人なのに、家族の都合などで退院できなかった事例。 入職2年目にDrから、症状が安定しているのに退院できない20ケースを預かって関わったことがあります。結局本人の症状悪化時に、どれだけ家族に迷惑を掛けたかと相関関係にあることが分かり、時間を掛けて丁寧に関係改善に努力しました。そんな努力もせずに、家族が主治医も無視して、ひどい病院に転院させられたケースもありました。 ②精神・知的などの重複障害を持ち、生活経験の少ない人など、支援に限界があったケースなどを参考にして積み重ねることによって、サロンやしののめハウスを立ち上げてきました。Q6:今までに、施設内でメンバーさんが、他のメンバーさんやスタッフに対して暴力などを起こされたことはあるのでしょうか。あればどういう対応をされましたか。
薬は出来るだけ飲まない方が良いと信じているメンバーさんが、欠薬によって症状が悪化し、妄想が再燃し、他のメンバーさんへの攻撃がひどく恐れられていました。その内遂に椅子を振り上げて他のメンバーさんに大ケガをさせ、警察を呼ぶに至り、強制入院となりました。でもその方が退院するときに、どうしてもしののめハウスに戻りたい、しののめハウスに行けなければ自分の人生はないと、加入を申し出てきました。 そのため、メンバーミーティングで話し合い、症状の出ない時はいい人だと言うことで、必ず治療を受けることを条件に加入を認めました。今もしののめハウスで大きな顔をして過ごしています。 暴力や窃盗があったからと言うことでは原則排除していないので、他の施設から追い出された方がかなりおられます。そのため器物損壊や暴力は時々ありました。でもメンバーさん達は共感度が高いのか、優しい人が多いのか、受け入れてくれています。これは施設側に排除の構造がないからかもしれません。Q7:今までに出会った出来事の中で、人生観が変わるようなことはありましたか。あればお伺いできますか。
唯単に目の前にいる「援助を求めてくる人」に対応しているだけで、人生観が変わるような出来事はありません。人生観が変わったから今があるわけではなく、自分が最も大切だと感じていることに関して、ぶれずにやってきたことが今後の自分を作っていくことになると考えています。Q8:椅子や食器などは「いただき物」が多いという素敵なお話しがありましたが、どういった経緯(つながり)でいただけるものなのでしょうか。
◯お声を掛けていただくと、断りません。断ってしまうと二度とお声を掛けてもらえなくなります。要らない物の処分を誰かに声を掛けるのは勇気が要ることだと思います。 ◯要らない家具や食器は捨てられ、粗大ゴミになります。粗大ゴミを出さないよう社会貢献していると考えます。 ◯要らない物となっても、この世に生み出された物は、何らかの形で再利用することによって最後までその目的を全うすべきだと考えます。